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こちらは横浜・神奈川県を中心とした詩人会のホームページです。
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yokohama sijinkaiHP since 2009

会長 佐相憲一
横浜詩人会 事務局(理事長) 〒252-0325 相模原市南区新磯野4-6-3-205
金井雄二方
郵便振替 00230-0-5574 ヨコハマシジンカイ

横浜詩人会会員の詩書及び横浜詩人会賞の詩集の一部紹介です。

会員の詩書の紹介
会員の詩書及び横浜詩人会賞の詩集の一部を紹介します。

会員で詩書を載せたい方は……

会員の詩書の情報募集しています。掲載希望の方はご連絡ください。順次・適時掲載していきます。
ただし、詩書はサイト担当者への謹呈とし、返却はできませんので、ご了承ください。また、送料は掲載希望者のご負担となります。
横浜詩人会のメールです



新紹介 あがべなお詩集
東海道五十三次 おみなゆくべし
響文社
2022.1.28発行
「こたびの旅は/観光ではなかった///今一度の旅をと/思いつつ/十五年もたってしまった/足の手術/頭の手術/無理である/無理なので/詩でもって/京都迄/行かばやと/行かばやと……」
(「はじめに」より)



浅野言朗詩集
『2(6)=64/窓の分割』
(ミッドナイト・プレス)
2008.9.12発行
第41回横浜詩人会賞
「未だ何の約束もなかった 約束もないのだから裏切りもない真っ白い時刻である 初めての場所は様々に夢想されていた 例えば鬱蒼とした〈森〉であったり何もない〈面〉であったり いろいろな始まり方によって街は異なった歩みを辿る」(「森」より)

*書名の「2(6)」は「2の6乗」です。



浅野章子詩集
『片付けられない』
(成巧社)
2010.2.1発行
「私の海には 渚がない/岸壁に打ちつける波の激しさに/夢に破れた青春の思い出がある/遠い沖合に浮かぶ/黒い貨物船/それが句読点に見えた記憶がある」(「横浜港」より)



浅野章子 詩と写真集
『涙が出てきそう~わたしのみなとみらい21~』
(佐藤印刷所)
2009.2.17発行
「朝日に染められて/抜けてゆく空/鳥は高い窓をめざして飛ぶ//飛び跳ねる子らよ/ふるさとは ここ/水晶体がきらめき/伸びゆく街」(「ふるさとは ここ」より)



油本達夫詩集
『海の見える街で』
(花梨社)
1978.6.30発行
「見えているのはどこまでも坂である。/昼下がりの陽に照らされて/ゆるやかにつづく/あかるい坂。/その/果てを見ないまま/空は頭上で蒼く燃えている。」(「坂について」より)


新紹介 荒船健次詩集
川崎大師本町
金雀枝社
2023.11.20発行
「かき氷を頬張ると冷たさで/頭がじんじん痺れ/脳の蝉が驚いて鳴く/耳の奥に棲みつく蝉が/時々 じんじん鳴く//川沿いの陽炎の小径を歩いている/少年は蝉の鳴き声を訊いた(中略)わたしは耳蝉を見たことがない/誰か教えてください(後略)」(「耳蝉」より)


荒船健次詩集
『ブナに会いに行く』
(成巧社)
2009.9.7発行
「お金を払って泣きに行く店がある/夕立のように泣いて/重たくなったこころを洗い流し/店を出て行く/新宿や渋谷付近には/そういう店が何軒もあって/結構繁盛しているという/重たくなる度に店に駆け込む」(「夕立のように泣いて」より)


池田髙明詩集 
『可能が可能のままであったところへ』
(文化企画アオサギ)
2022.12.28発行
「じっちゃん こんどは地面を深く掘り下げていた//落ちてくるモノの胸苦しさに/吸い込まれていくじぶん/はじめてのことだった/―ぼくに なにかを告げようとしているのか/声がだせなかった/ぼんやりと 上下する桑だけを見ていた」(「空の穴」より)


井嶋りゅう詩集 
『影』
(文化企画アオサギ)
2023.6.18発行
「急な雨に濡れたまま帰宅し 下降してくるエレベーターを待っていると エントランスの自動ドアがゆるゆると開いて閉じた。蛍光灯が不規則な瞬きをしているこの通路を通る者に 気づかぬはずはなかったが人影はなく掲示板に故障の貼り紙を見た記憶もなかった。」(「蝿」より)


伊藤悠子詩集
『傘の眠り
(思潮社)
2019.9.20発行
「下りエスカレーターを/傘が滑り下りていく/人より速く下りていく/だれをも突かず/やっと平らになった/眩暈は円錐形となって/地に突き立てる/急いでベッドに平らになる」
(「傘の眠り」より)



今鹿仙詩集
『永遠にあかない缶詰として棚に並ぶ』
(金雀枝舎)
2018.10.23発行
第51回横浜詩人会賞、第15回日本詩歌句随筆評論大賞奨励賞(詩部門)
「バッハに身をまかせていると/説教されているようだ/だんだんと目がさがってくる/どこの水を飲んでいるのかも/銀行に何を預けたのかも/分からなくなると思う/それでも蓋は必要だ」
(「バッハ」より)



梅津弘子詩集
『山ガール
(詩人会議出版)
2015.11.30発行
「ザクザク 霜柱を踏んで/十五人の山ガールが歩く/ハアハア はく息の音/十五人の山ガールは呟く/ 若い頃のようにいかないわ/ やっぱり 年だね/ 喜寿の記念よ もう一息ね」
(「山ガール」より)


うめだけんさく詩集
『海へ向かう道』
(土曜美術社出版販売)
2020.12.5発行
いのちの いのちのと/みずをくちにふくんでいいきかせる//うみはなにもいわない/だまってみているだけである/でもわかるのだ/おまえはいきているんだとおしえるように
(「海の声」より)


うめだけんさく詩集
『埋葬の空へ』
(土曜美術社出版販売)
2019.7.20発行
ひふのうちがわでないている/あれはあのひとのたましいのふゆうに/はんのうするぼくのこころだ/だからあーちゃんはしねないのだ/じゅんすいになれないおとこをうれいている/いまでも ばかね と/だからゆめのなかでみつめつづけてしまうのだ(「埋葬の空へ」より)


大石規子詩集
『十一行』
(花梨社)
2023.1.11発行
「食べれる 見れる/超 超 めっちゃ/グロイ エモい 鳥肌が立つ//〈慣れない言葉が氾濫する/言葉は生きもの/とは言うものの/私には使えない//きれいに飾ったひとが ヤツと言うのも//願わくは 美しく変わってほしい」(「言葉」より)


大木潤子詩集
『石の花』
(思潮社)
2016.8.5発行
「水が耳を、そばだてていた。//光の歌が、聞こえるような気がした。//それはもういない光の、残像であろうか。//聞こえた、と思うその時には歌ももう、いないのであった。//新しい光が来て、また/去っていった。」



荻悦子詩集
『影と水音』
(思潮社)
2012.9.30発行
「音をたてて/水が湧いている/人工の池に/漲る水/手をかざすと/明るい水の揺れが/手の影を/指先から溶かそうとする/細い小枝をくわえて/鳩が歩いてきた/首を振りながら/そのまま進んでいく/後頭部から首への/滑らかな丸み」
(「影と水音」より)



奥津さちよ詩集
『歩く』
(土曜美術社出版販売)
2015.12.10発行
「砂に埋まって消えてゆく文明/危険をはらんだこの星/太陽を残して この身も消えてゆく/やがてその日は来るだろう//でも今 わたしは生きている/わたしの時間のなかを/わたしの意識のなかを」
(「歩く」より)



長田典子詩集
『翅音』
(砂子屋書房)
2008.8.5発行
「蝉の死骸があった/狭く 仕切られた/草叢の中に/ひっそり/錆びた鉄屑みたいに/崩れて/黒土に染みていたが/羽根だけはもとのままだった/パズルから抜け落ちた破片がひとつ/葉裏で冷やされた風に震えながら/まだ生きている」(「針都」より)



長田典子詩集
『清潔な獣』
(砂子屋書房)
2010.10.22
「今朝は/慌てて卵を割った/歪む湖面とともに/フラッシュバックする/発破音(ダイナマイト)が鈍く響いていた日々」(「蛇行」より)



禿慶子詩集『彼岸人(あのひと)』
(勁草出版サービスセンター)
1981.8.15発行
第14回横浜詩人会賞
「死者はとうにひとりだが/かかわりから這い出し/散っていく蟻たち/とまどい せわしげに/黒い背中が焦げる/加熱したクーラーのもと/死体は/静かに腐爛する」(「夏・葬儀」より)


禿慶子詩集『我が王国から』
(砂子屋書房)
2006.11.22発行
「クリスタルの店に飾られた人魚は/透きとおったからだにミニチュアを宿し/七色に光を燃やしていた//ゆらめく水のなかで/虹色に輝くものを拾って/螺旋の糸に繋げる/ビーズ遊びを見たような気がする/四六個の球を対に並べたネックレス/無造作に掛けてくれた/あの 白い指はだれのもの」(「ビーズ遊び」より)



川端進詩集『鯤』
(土曜美術社出版販売)
2012.9.7発行
「ぼくの狭い頭の中には/大きな大きな水槽があってね/目高から鯨までいろいろな魚が/様ざまな泳ぎかたで泳いでいるんだよ」
(「鯤(こん)」より)



方喰あい子詩集
『誰かに手渡したくて』
(土曜美術社出版販売)
2014.11.15発行
「幼い日/屈んで摘んだ花の名前は/分からない//祖父に見守られて/花を摘んでは 見せていた/花を握っては 祖父の方へ/よちよち歩いていた」
(「誰かに手渡したくて」より)


方喰あい子詩集
『ビオラ ソロリアプリセアーナのある庭』
(土曜美術社出版販売)
2021.7.28発行

「わたしの命を燃やしたい/若い日、心中に秘めた/子を生し 人の命をつなぐ/そのことよりも//子を生し/職業を脱ぎ/今、わたしは/何をつなぐのだろう」(「ビオラ ソロリアプリセアーナのある庭」より)



金井雄二詩集
『朝起きてぼくは』
(思潮社)
2015.7.31発行
第23回丸山薫賞
「コノ道ヲマッスグニ行ッテクダサイ//少し歩くと突きあたりになります/そこを右に曲がってください/両側は鬱蒼とした灌木が繁っているでしょう/どうか立ち止まらないでください/多くの人たちがこの道を歩いたのです」
(「椅子」より)



草野理恵子詩集
『パリンプセスト』
(土曜美術社出版販売)
2014.9.30発行
第47回横浜詩人会賞
第11回日本詩歌句随筆評論大賞優秀賞
「―土は腐っているからすぐ抜けます/と 言われた場所は校庭で/白い陶器がいくつも並ぶそこにしゃがんだ/私は病気が巣くう子どもだったので/もうじき死体になると思った」
(「土」より)


草野早苗詩集
『祝祭明け』
(思潮社)
2022.9.30発行
「疲れて翼を洗う気を無くした守護の天使が/「もう帰りましょう」と言う/何処へ/「私たちは家に帰れるでしょうか」/守護の天使と私は久しぶりに手をつなぐ/イースターの祝祭が明け/明日からまた/たくさんの森を越えてゆく」
(「祝祭明け」終連)


草野早苗詩集
『夜の聖堂』
(思潮社)
2016.5.31発行
第48回横浜詩人会賞
「坂道でヨセフとすれ違った気がしたので/久しぶりに行ってみようと思った//死者のための蝋燭が並び/陣内は灯りにゆるく揺れている/左手から始まる十字架の道行きの/十三枚のテラコッタ/聖体の存在を示す紅いランプ」
(「夜の聖堂」より)



黒岩隆詩集
『青蚊帳』
(思潮社)
2017.8.31発行
「蚊帳って/シェルターだね/夏になると/日本中 蚊帳を吊って寝たものさ/蚊や蛾やカナブンの猛攻に耐えたんだ//晴れた日の夕方/蟬の幼虫が 初めて地上に出て/庭の桐の木を登り始める/坊やは これを捕まえて/蚊帳の内側にとまらせた」(「青蚊帳」より)



『現代詩の10人 アンソロジー坂井信夫』
(土曜美術社出版販売)
2000.9.10発行
「一九八九年一月の真昼、いっぴきの巨大な白蛇が、ゆっくりと青梅街道を這っていた。テレビを観ている者たちには黒塗りの乗用車の列としか見えないが、それらは白い蛇のかげだ。」(「冥府の蛇 19」より)



坂井信夫詩集
『影のサーカス』
(漉林書房)
2010.2.25発行
「一九四五年――というよりも昭和二〇年といったほうが、この国では分かりやすいかもしれない。八月一五日、ようやく敗戦。いや、これも人びとにとっては終戦として感じられたであろう。いずれにせよ焦土と化した首都においては小さなサーカスが出現したことは、まったく知られていない。」(「影のサーカス」一より抜粋」)



坂多瑩子詩集
『スプーンと塩壺』
(詩学社)
2006.11.20発行
「とびらは少しあいていたが/ただ待つだけに/すでに三時間はたっていて//むかしむかしふたりのむすめがいました/ひとりはかわいくはたらきもの/ひとりはそのはんたいでした/むかしむかしいちどもわらったことのない/おひめさまがすんでいました/かあさん むかしむかしのはなしのなかに/なにをかくしていたのですか」(「歯車」より抜粋」)



坂多瑩子詩集
『お母さん ご飯が』
(花神社)
2009.6.25発行
「くりかえし くりかえされて/見渡すかぎりの食卓/きりもなく/ご飯を食べるようになった母さん/じゃがいものニョッキを食べる母さん/さといもの揚げだんごを食べる母さん/ふわふわオムレツを食べる母さん/はるかな 遠い食卓で/きりもなく/離乳食を食べている母さん」(「はるかな食卓」より全文引用)



佐川亜紀詩集
『押し花』
(土曜美術社出版販売)
2012.10.20発行
第46回日本詩人クラブ賞
「若い皮膚が理不尽に貼り付いたような花弁/花弁の重なりに風が畳まれている/重なりの間に針の穴ほどの道がのぞく//おしべは愛にまみれた失語を捧げ/めしべは死児を孕んでほっそり腐り//夏の黒い押し花が世界の光を吸い込んだまま/死の口づけ/焼けただれた喉は長く続く/火の原罪に幻視された白い花」(「押し花」より)


『佐川亜紀詩集』
(土曜美術社出版販売)
2022.3.30発行
「母の胎の赤いドアをあけ始めた者よ/いのちという不思議な大樹の/世界という揺れ動く生きものの/輪郭をたどるのはおまえの指である/色彩をくみとるのはおまえの目である/未知の言葉をききとるのはおまえの耳である」(「妊む」より)



佐相憲一詩集
『森の波音』
(コールサック社)
2015.9.28発行
「吹いてくるもの//発生するもの//何かをこらえながら/顔を上げる時/新しくて懐かしい匂いを運ぶ//だめかもしれないという時にささやいて/記憶や知識よりも確かに/生きていることを/思い出させてくれる」(「序詩 風」より)


佐相憲一詩集
『サスペンス』 
(文化企画アオサギ)
2022.6.23発行
「〈今日は寒いですね〉/電子世界に投げられた言葉は/時候挨拶なのか/精神状況あるいは/暗示か//〈そうですね〉/半そでシャツに汗をかきながら応える/その時点でもう/何かの〈詩〉を共有しているのだろう////〈ひとりじゃないんだ〉/この感覚を求めて」(「電子体温計」より)


佐野豊詩集
『夢にも思わなかった』 
(七月堂)
2023.5.26発行
第55回横浜詩人会賞
「きみにしては/こっちにくるのがはやいんだね/愛称のようなもので呼びあって/たたみのへやで暖をとる/横になって/かおとかおを合わせ/しまいにはくっつきあって/ひとつのふとんにもぐる」(「暖のとりかた」より)


塩路明子詩集
『魔法の森』
(文化企画アオサギ)
2022.5.8発行
第54回横浜詩人会賞
「魔物が ひっそりと気配の入り口に住んでいる。/抽象の見かけない箱の中。/具象の見かける箱の中。//探さなければ 見つからない。//探しあてれば 魔物に魅了される。」
(「魔物」全詩)


柴田千晶詩集
『空室 1991-2000』
(ミッドナイト・プレス)
2000.10.25発行
「ここに立つと女はみな/同じ鍵穴のついた空室になる/値ぶみするような/男の視線に/まともにぶつかり/私は表札のない空室になる」



柴田千晶詩集
『セラフィタ氏』
(思潮社)
2008.2.28発行
第40回横浜詩人会賞
「雨降ればオフィスの午後は沈鬱に沈み深海魚として前世//眼が乾く/何処に居ても/眼が乾く(外気に触れたい)/(外交を浴びたい)/誰といても/眼が乾く(言葉を交わしたい)/(性交したい)」
(「セラフィタ氏」より)



下川敬明詩集
『暗黒と純白の讃歌
(待望社)
2021.4.23発行
「私は いま 永遠そのものだわ!//その瞬間 ぼくは/更に疾駆(ダッシュ)しなければならない/(中略)/(これが夢でありますように/きみが見ている ぼくの夢でありますように……)」
(「Ⅴ 無条件降伏 欲望への」より)



下川敬明詩集
『雨 その他の詩篇』
(待望社)
2019.8.17発行
「降らなかった//きみにも ぼくにも//水いろの空の破片(きれはし)が//降りかかることは なかった//ぼくたちは 雨宿りすることも//軒先から軒先へと小走りに移ることもなく//まっすぐに続いている街路」(「雨は」より)



進藤友佳詩集
『砂時計の朝』
(抒情文芸刊行会)
2011.9.25発行
「メランコリーな朝日が/空になった砂時計のガラスを照らしている/それは沈黙したまま/時を刻まず進ませない/雲が流れて陰影をつくり/慌ただしい時間は時計の外側で/内側からは出られない私の毎日」(「砂時計の朝」より)



菅野眞砂詩集
『浜木綿の咲く浜辺』
(花神社)
2004.6.10発行
「夜来の雨が止む/どこかで土鳩が鳴いている/ ぐるる ぐるる/ありけり をりけり はべりけり/言葉はみな過去の形に/いる筈の人はもう居ない/居ないという存在/あなたは居ないという世界が/私の世界」(「わかれ」より)



鈴木正枝詩集
『キャベツのくに』
(ふらんす堂)
2010.3.8発行
第42回横浜詩人会賞
「にんげんになった気がする/立っている気がする/動かない/たぶん あしたもあさっても……/にんげんだからね」(「にんげん」より)



関中子詩集
『話すたびに町は旅する』
(土曜美術社出版販売)
2010.12.10発行
「どこからお話は始まるのか/どこからなら始められるのか/あの不動産屋から話を始めようか/それともわたしが家に残った訳からがよいだろうか」
(「どこから」より)



関中子詩集
『誰何』
(思潮社)
2021.6.18発行
「足音を聞いている/わたしを聞いている/わたしを感じて音を置く/わずかの間に/わたしを残そうとする/こうしておまえは歩いている/こうしておまえはやがて行ってしまう」
(「誰何」より)


高細玄一詩集
『声をあげずに泣く人よ』
(コールサック社)
2022.7.10発行
「声をあげずに泣く人よ/その声がどうか/地の底へ届きますように/今日の日を忘れず/過ごせますように/今日をどうか/生きて過ごせますように」
(「序詩」より)


多田陽一詩集
『きみちゃんの湖』
(書肆子午線)
第52回横浜詩人会賞
2019.7.15発行
「腕時計を見つめ/カウントするわたしの手の下で/接続チューブを流れていく液体/若いいのちに組みこまれた/滴下のひびきが/きみの鼓動にとけていく//」
(「序詩」より)


田中裕子詩集
『カナリア屋』
(土曜美術社出版販売)
2015.9.17発行
「裏ごし器の上のゆでたまごが/端から崩されて/白と黄のひかりの粒が降り積もり/ふるえている/赤 黄 白 巻き毛/カナリアは/他の鳥のさえずりとは別の岸辺にいるように/美しい声で歌い/黄金の食べものをついばんだ」(「カナリア屋」より)


田中裕子詩集
『五月の展望台から』
(土曜美術社出版販売)
2022.10.22発行
「そのひとはまるで犬を抱くように/やさしく魚を抱えた/口先を撫で尾びれをそっとおさえ//魚は彼の腹の前で/このひとの腕の中でなら肺呼吸だってできます とばかり/誇らしげな胸びれ/不覚にも釣られたのではなく/待ちわびてさえ」(「ニジマス」)より


田村雅之詩集
『水馬』
(白地社)
2011.10.5発行
「老いびとがみな/春を待ちのぞむよう/卒寿の踏青を/ゆらりあゆもうとしている母の/去年夏、上梓した句集『冬麗』に/「娘純子よ」と詞書を付した句が一句ある//患(わづらひ)を環し転生水馬(みづすまし)」(「転生水馬」より)



鎮西貴信詩集
『さまざま想』
(土曜美術社出版販売)
2018.9.30発行
「愚か者 愚か者よと/さまざまなものを指差してきた/ただ指差すだけの気取り屋だった//何もできなかった/立ち向かう力がなかった/外野で叫ぶこともしなかった」(「愚か者」より)



徳弘康代詩集
『音をあたためる』
(思潮社)
2017.8.28発行
「「わたしが一番きれいだったとき」と/うたったひとがいた*/大きな不幸とそのあとの荒廃の中で//そのように生きてきた しんでいった/ひとびとの その不幸と荒廃の/ただ中をぬけて そのうしろに/今わたしが在ることの 幸運と後ろめたさ///*茨木のり子さん」(「これからの先の人生のなかで、今が一番きれい」より)



谷口鳥子詩集『とろりと』
(金雀枝舎)
2020.10.31発行
第53回横浜詩人会賞

「父ちゃんの温泉土産のトパーズは首輪のようで/トロフィーのなかに放ると短い音が二つ過ぎた//ともあれ迷ってきた とんまな犬のままでいる/閉じっぱなしならば壁 もたれると/   とろりと」(「とろりと」より)


中上哲夫詩集
『エルヴィスが死んだ日の夜』
(書肆山田)
2003.10.25発行
第34回高見順賞
「エルヴィスが死んだ日の夜/ゴールデン街とよばれる前の/新宿・花園町の/バラック小屋のバーの/ぐらぐらする地軸のとまり木の上で/新鮮な酔っぱらいがきたら帰ろうと思いながら/朝まで/エルヴィスのレコードに耳傾けてすごした/エルヴィスのファンだという/ほうまんなママさんと。」(「エルヴィスが死んだ日の夜」より)



中上哲夫詩集
『ジャズ・エイジ』
(花梨社)
2012.9.30発行
第28回詩歌文学館賞
「図書館の固い椅子の上で/エリオットやパウンドやウィリアムズを読んでいたきみは/(もちろん、ホイットマンやディキンスンも/英文学者となった/講師、助手、助教授、教授と/一段一段/ゆれる縄梯子をのぼって行って。/棒杭のように/渋谷や新宿のジャズ喫茶を漂流し/夜は安酒屋や立ち飲み屋で苦い酒を呷っていたわたしは/詩人になるしかなかったのだ/ギンズバーグという毒入りハンバーグを囓ったので/ビートニクになるしかなかったのだと)」(「序詩」より)



中島悦子詩集
「マッチ売りの偽書」
(思潮社)
2008.9.18発行
第59回H氏賞、第7回北陸現代詩人賞
「ふつう見られる言葉は、空気中で可燃物質がおこなう酸化反応、つまり燃焼によるものである。言葉の熱はこの反応によって生ずる反応熱で、詩はその熱によって高温になったためにおこる温度放射、あるいは励起した原子や分子による発光がおこなわれた結果である。」



中島悦子詩集
「藁の服」
(思潮社)
2014.10.25発行
第48回小熊秀雄賞
「きらきら市役所の前に柩が置かれた。柩には、「生きながら、入りますか?」という張り紙がしてあった。きらきら市役所のシステムは、すでに魂が抜けており、この事件をどのように対処すべきか分からなかった。これは、批評ですか。批判ですか。というか、芸術表現ですか、いわゆる。」「柩をめぐる」より



野木京子詩集
『クワカケルル』
(思潮社) 
2018.9.30発行
「ときどき境目がにじんでわからなくなるのです と/シグナルのように尾を振りながら見えない声を撒いていた//わたしやほかのひとたちがいなくなっても/地面の下では 彼らが陽気に笑い続けているはず」(「クワカ ケルル」より)



中村純詩集
『はだかんぼ』

(コールサック社)
2013.10.11発行
「おふろあがりの君/はだかんぼ! と言って笑い/バスタオルを持つ私の手から逃げる/おしめもしない/お洋服も着たくない/はだかんぼ」
(「はだかんぼ」より)



中村不二夫詩集
「コラール」
(土曜美術社出版販売)
2007.12.10発行
「どこからやってきたのか まるで風のように/その人の正体はだれにも分からない/その手に促されるように ぼくは川に入った/ぼくが水に入ると その人は一瞬姿を隠した」(「祝福-クリストファーのために-」)


馬場晴世詩集
『草族』
(土曜美術社出版販売)
2018.11.30発行
私の草原に/高い塔を建てることにした/素朴な日干し煉瓦で//塔を降りて/草むらにひそむものに出会おうと/寄り添う木一本もない/草原を歩いて行く//どこからか声が聞こえる/「草原に出口はないよ」(「草原」より)



原田もも代詩集
「御馳走一皿」
(土曜美術社出版販売)
2017.8.30発行
「肉の塊には皮がついていた/この豚が生きている豚だった証しの皮膚/皮膚を透かせて/こわい毛が生えていた」(「御馳走一皿」)



原田もも代詩集
「自画像によく似た肖像画」
(七月堂)
2012.11.19発行
「これは誰/探るような いぶかしむような/何に行き暮れているのか/私はこんな目をしていない/それでいてどこかに潜む不遜/私はこんな口元をしていない/私はこんな…」(「自画像によく似た肖像画」)



服部剛詩集
「我が家に天使がやってきた-ダウン症をもつ周とともに」
(文治堂書店)
2018.4.25発行
「「人生には、真逆(まさか)という名の坂がある」/ある日、同僚は言った//愛する女(ひと)と結ばれた僕は/三十年住んだ実家を出て/十二年詩を朗読していた店が閉まり/十年働いていた職場から異動になった//「真逆という名の坂を」登り切って断崖に立ったら」(「坂の上にて」)



平林敏彦評論集
『戦中戦後 詩的時代の証言1935-1955』
(思潮社)
第12回桑原武夫学芸賞
2009.1.10発行
「もし「きみはいつから詩人になったのか」と問われたらどう答えるか。うろたえるしかないだろう。詩人と名乗るのはむろんのこと、そう思われるだけでもかなり気がひける。にもかかわらずぼくが「詩的時代の証言」というタイトルで、「詩とは何か」「何のために書くのか」という厳しいテーマにも繋がりそうな原稿に取り組むのは傲慢不遜ではないか、と背筋が寒くなるのだが、気づけばすでに矢は弦を離れた。」



平林敏彦詩集
『遠き海からの光』
(思潮社)
2010.7.31発行
「夜あけがた/なにかが胸の上に重くのしかかる/声はあげずにやっと押しのけ/目をつむったまま 水に浮かんでいる/おまえはいったいなにを待っているのか」(「冬の骰子」より)



広瀬弓詩集
『水を撒くティルル』
(思潮社)
2010.10.31発行
「ひかりとばくはつ/ひかりとばくふう/いちめんのひかりのとんねるから/ひかりはひかりにむかって/とびついた」(「しるし」より)


福田拓也詩集
『DEATHか裸』
(コトニ社)
2022.3.6発行
「何も求めなくなって/死体のように生きている/その人と/合体した空の風/となり/奇妙な体となってぼくたちは/風景よりも大きく/ふくれあがる/裸の光に/爪たい肉、きらきらと/どうしようもない面影が/かき消される夜」(「ハウスダスト」)より



藤森重紀詩集
『まちのかたち 凡庸な日常』
(龍工房)
2020.6.30発行
「1/疫病のために/まちのかたちが変わった/人の視線が恐ろしい//2/疑うこと/差別すること/それが前提にあるとは/3/かたちはその町の/日常のありさま」(「まちのかたち」より)



細井章三詩集
『黒い帽子と黒いマント』
(エリア・ポエジア叢書7)
(土曜美術社出版販売)
2009.12.23発行
「狭い個室の天井高く、小さな窓が見える/今朝は、窓が真っ青だ/その片隅から、ふと真っ白い塊が/反対の隅へと流れていった/あとを追うように、黒い影が横切った/あれは鳶だったか/客のつかない道化師だったか」(「独房残日」より)


細野豊詩集
『悲しみの尽きるところから』
(土曜美術社出版販売)
1993.11.10発行
「悲しみの尽きるところから/僕の歌は始まるだろう//アンデスの高原平原(アルティプラーノ)が不意に途切れ/はるか眼下にアマゾンの樹林が広がる/そんな景観に出合うとき/僕の歌はそこから始まるだろう」(「悲しみの尽きるところから」より抜粋)



細野豊詩集
『花狩人』
(土曜美術社出版販売)
1996.3.10発行
「厠は塞がれていて/じくじく染みだしている/それを包みこむように/咲き乱れる/彼岸花の群れ//少年は/夢中になって/摘みとり/顔を埋める」(「花狩人」より)



光冨郁也(幾耶)詩集
『サイレント・ブルー』
(土曜美術社出版販売)
2001.5.1発行
第33回横浜詩人会賞
「頭を抱え、うずくまる彼は、/蒼白の、わたしの姿だった。/わたしは、/わたしに、/蹴りをいれつづける、/足がしびれる。/顔をしかめ、目を見開き、/喉をつまらせながら、/わたしは、/わたしの背に、痛みを与えつづける。/沈んでいく、体が重い。」(「バラ線より」)



光冨幾耶詩集
『惑星』
(オオカミ編集室)
2021.1.1発行
「遠く西で生まれたあなたと/海に近い東でうまれたわたくしと/惑星の大地に/ここで新しい生活を水平の地とするために/あなたの目尻を指でなぞります/((幸せのかたちを知りたいから 壊したくはないその形を」
(「光る鱗」より)



南川隆雄詩集
『爆ぜる脳漿 燻る果実』
(思潮社)
2013.4.30発行
「雨は さまざまに思いを巡らしながら降ってくる//足うらの形に青草がたおれ もちあがり/ついで一歩先で同じ形に青草がたおれる/だれかが忍び足で通り過ぎたのだ/うしろ手に縛られたわたしの目のまえを」(「雨」より)


松浦成友詩集
『斜めに走る』
(思潮社)
2018.12.25発行 
「大きな空虚を抱えているのではないか//空虚をきれいに彫り上げたとき/      すべてが終焉する/そのとき初めて消えていった木屑の数々を思い出す/あれこそが生そのものの姿ではなかったかと」(「彫る」より)



三浦志郎詩集
『時の使者』
(文化企画 アオサギ)
2020.12.15発行 
「鎌倉幕府の公式記録「吾妻鏡」によれば、宝治元年(一二四七年)鎌倉では奇怪なことが多かった。由比ヶ浜の潮が赤く染まったり、大流星が音を立てて飛び去った」(「帰蝶」より)



村山精二詩集
『帰郷』
(土曜美術社出版販売)
2006.12.20発行
第39回横浜詩人会賞
「大事な言葉も例外ではない/短歌が俳句が/芸術の前衛と謂われなくなって久しい/詩が/真っ二つになっていく」(「帰郷より」)



森川芳州詩集
お母さんと呼ばせて
(土曜美術社出版販売)
2020.3.15発行
「私の夢の中/母は探し続ける/ヨシ坊と呼ばれていた/私を//余りにも遠い日/このまま隠れていよう/やわらかな思いに/包まれて」
(「かくれんぼ」より)



新紹介 若尾儀武詩集
『戦禍の際で、パンを焼く』
(書肆 子午線)
2023.7.15発行
「異星の火を欲しがって/パンは一瞬にして黒焦げる」(「26」より)
「今日のパンは/今日の火と水で焼け/非常を理由に焼き溜めをするな」(「28」より)「老婆が闇に手を伸ばしている/と/待っていたのだろうか/脈を辿って/戻ってくるものがある//おかえり/いま パンが焼けたばかりさ」(「37」全詩)



渡辺みえこ詩集
『空の水没』
(思潮社)
2013.11.30発行
第十回日本詩歌句大賞
「母は父が掘った井戸に 身を投げて死んだ/私たち家族はその後/ずっとその水を飲んで暮らした/姉と私は母の井戸の水で育った」(「母の井戸」)

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